「株を守りて兎を待つ」という諺もあります。 中国の古典「韓非子(かんびし)」を起源とする諺だそうです。 宋の国の農民が、切り株に兎がぶつかって死んだのを拾って以来、また同様に兎が手に入るのではないかと、仕事もしないで毎日その切り株を見守っていて、国中の笑いものになったという故事に基づくものです。 古い慣習を守り、それに囚われて進歩のないことや、融通の利かないことの例えで使われます。 また、時勢の変化に気付かなかったり、一度味をしめたことを忘れられず、いつまでも変化を拒む姿勢のことをいいます。 同じ様な意味の諺では、「柳の下にいつもどじょうはいない」や「舟に刻(きざ)みて剣を求む」があります。 「舟に刻みて〜」も中国故事によるもので、揚子江を舟で横断する途中に、誤って剣を川に落とした男が、舟が流れ動くことを考慮しないで、剣が落ちた舟の端に目印をつけ、舟が川岸に着いた後、目印の下の川底を探しても剣が見つからないという話が基になっているそうです。 周囲が変化していることを知らずに、ただ頑なに旧態依然を守ることの愚かさをいった諺です。
さて、木の切り株に衝突する兎の話は、北原白秋が「待ちぼうけ」という題で詩にしています。 そして、山田耕筰が作曲して歌にもなっています。
待ちぼうけ、待ちぼうけ。 ある日、せっせと、野らかせぎ、そこへ兎が飛んできて、 ころりころげた、木の根っこ。
待ちぼうけ、待ちぼうけ。 しめた、これから寝て待とか、 待てば獲物は駆けて来る、 兎ぶつかれ、木の根っこ。
待ちぼうけ、待ちぼうけ。 昨日くわ取り畑仕事、 今日はほうづえ、日向ぼこ、 うまい切り株、木の根っこ。
待ちぼうけ、待ちぼうけ。 今日は今日はで、待ちぼうけ、 明日は明日はで、森の外、 兎待ち待ち、木の根っこ。
待ちぼうけ、待ちぼうけ、 元は涼しいきび畑、 いまは荒野のほうき草、 寒い北風、木の根っこ。
読んだ感想はいかがでしょうか。 教訓臭さを廃してユーモラスな詩になっていますが、さすがに最後の「寒い北風、木の根っこ」までくると、厳しい戒めの歌なのかなとも感じます。 以前はイネ科のキビが生い茂って涼しい畑だったのに、手入れもしていないのでススキの茂る荒野となり、寒い北風が吹きすさぶようになってしまいました。 以前一回あった幸運(成功事例)に囚われてしまい、日々の努力を怠ってしまった結果、今まで持っていたものまですべて失ってしまったという悲惨な結末の歌なのです。 今回は兎年に因み、ウサギの諺や格言を掘り下げてヒントとしてみました。 結論としては、「過去の成功体験に縛られ過ぎず、攻めに転じる際には脱兎の如く全速で果敢にいけるよう、知恵や技術を蓄積して、守る時は守り、いくつも欲張って取りに行かず、ひとつに定めたゴールに向かって、競合者を意識し過ぎずに、ただひたむきに自己の能力を信じて跳び続けることが重要である」となりますが、いかがでしょうか。
今年一年が兎の様に飛躍の年となるようお祈りいたします。 |